「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」


 1971年2月2日、カスピ海とアルボルツ山脈に挟まれたイランのラムサール(RAMSAR)という町で開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」において、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」として採択されました。その後、採択された国際会議の開催地にちなみ、「ラムサール条約」と呼ばれるようになりました。

 ラムサール条約は、自然資源の保全とその賢明な利用(ワイズユース)に注目し、各国政府間ではじめて取り決められた協定です。特に水鳥の生息地保全をキーワードに、湿地生態系と生物多様性の保全と賢明な利用に重点を置いて、各締約国が取るべき措置について規定しています。

 UNESCOが寄託機関ですが、実際の管理業務は、スイス、グランにある「ラムサール条約事務局」が行っています。

ラムサール条約事務局のホームページ(英語・フランス語・スペイン語のみ)
http://www.ramsar.org/


ラムサール登録湿地

 ラムサール登録湿地の対象となる湿地は、生態学的、植物学的、動物学的、湖沼学的、水文学的な観点から国際的に重要であると考えられる湿地、または水鳥にとって重要であると考えられる湿地です。

 ラムサール湿地に登録することにより、特に地域住民は湿地に対し関心を持つようになり、その湿地が国際的に重要であるという意識を高めることができます。また、長期的な湿地保全活動及び賢明な利用についての展望をもつことができるようになります。

 ラムサール条約加盟国は、ひとつ以上の湿地をラムサール登録湿地として登録する必要があります。2013年1月現在、163ヵ国が締約国となり、2,065の湿地が国際的に重要な湿地(ラムサール登録湿地)に指定されています。登録湿地の総面積は、約2億ヘクタールに及びます(2013年1月現在)。

 日本は、1980年6月に、釧路湿原をラムサール登録湿地に指定し、同条約に加盟しました。その後、締約国会議のたびに登録湿地を増やし、2013年現在、46の湿地が登録されています。

ラムサール条約登録湿地関係市町村会議 編「ラムサール条約締約国会議と日本の条約湿地・関係市町村の変遷」
http://www.ramsarsite.jp/img/hensen.pdf


 ラムサール条約締約国会議では、ラムサール条約の規定を推進・実施するため、湿地の国際的重要性を確認する基準を作成しています。

 
「ラムサール条約第7回締約国会議」(コスタリカ、1999年)で採択された基準

基準1.

適当な生物地理区内に、自然のまたは自然度が高い湿地タイプの代表的、希少 または固有な例を含む湿地がある場合には、当該湿地を国際的に重要とみなす。

基準2.

危急種、絶滅危惧種または近絶滅種と特定された種、または絶滅のおそれのある生態学的群集を支えている場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準3.

特定の生物地理区における生物多様性の維持に重要な動植物種の個体群を支えている場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準4

.

生活環の重要な段階において動植物種を支える場合、または悪条件の期間中に動植物種に避難場所を提供している場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準5.

定期的に2万羽以上の水鳥を支える場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準6.

水鳥の一の種または亜種の個体群において、個体数の1%を定期的に支えている場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準7.


固有な魚類の亜種、種、または科、生活史の一段階、種間相互作用、湿地の利益もしくは価値を代表する個体群の相当な割合を維持しており、それによって世界の生物多様性に貢献している場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準8.

魚類の重要な食物源であり、産卵場、稚魚の成育場であり、または湿地内もしくは湿地外の漁業資源が依存する回遊経路となっている場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

日本のラムサール登録湿地

世界のラムサール登録湿地
Ramsar List of Wetlands of International Importance (英語)
http://www.ramsar.org/index_list.htm