トピックス

  • 2014-10-17 アンザリ湿原 > No.19 JICAアンザリ湿原環境管理プロジェクトの本邦研修を受け入れました
    国際協力機構(JICA)がイランのアンザリ湿原で進めている環境管理プロジェクト(フェーズⅡ)の一環として、湿原生態管理や汚水・廃棄物処理などに携わる行政官を対象とした本邦研修が2014年10月13日から17日まで釧路で行われ、KIWCはその一部のプログラムを担当しました。
    この研修は日本工営株式会社がJICAから受託し、10月8日から24日まで日本各地で環境管理について学ぶもので、今回は12名が参加しました。研修員は流域管理、汚水管理、廃棄物管理、エコツーリズム・環境教育、湿原生態管理の5グループに分かれ、釧路湿原やその周辺の自治体施設を訪問し、自然再生事業や湿原内でのカヌーツアー運営、周辺市街地でのゴミや排水処理の方法など、それぞれの分野に応じた事例について学習しました。
    KIWCは10月14日に全グループ対象のプログラムとして、釧路湿原の保全と利用の概況について、講義と釧路湿原塘路地区の視察を担当しました。台風19号によるあいにくの悪天候でしたが、視察先の塘路湖エコミュージアムセンターや標茶町郷土館では、湿原周辺で発掘された縄文時代の遺物や開拓時代の民具などの展示を前に、釧路湿原と人との関わりの歴史について活発に質問や意見を交わしたり、職員手作りの湿原情報や子供達によるタンチョウのイラストなどの展示に見入ったりするなど、研修員は興味津々の様子でした。
    10月17日には釧路での研修のまとめとして交流会が開催され、KIWCも講師陣の一員として参加しました。KIWC技術委員長でもある新庄久志氏による、釧路湿原の自然再生に関する講義に続き、研修員がグループごとに成果の発表を行いました。最後にKIWC事務局長が総評を述べ、「釧路での研修の成果が、今後のアンザリ湿原の保全に活かされることを願っている」の言葉で交流会を締めくくりました。

  • 2014-10-10 技術委員会 > No.18 技術委員会が現地検討会を開催しました
    2013~2015年度(平成25~27年度)技術委員会調査研究テーマ「地域における湿地と恵み」について、釧路地域の事例を視察する現地検討会を、2014年10月10日に厚岸町で開催しました。今回は「藻場と漁業」について検討するため、技術委員のひとりである厚岸水鳥観察館の澁谷辰生主幹のコーディネートで、委員ら15名が厚岸湾と厚岸湖を訪れました。
    厚岸湾東側のアイニンカップ沿岸は国内最大級のオオアマモの群生地として知られています。視察には北海道大学北方生物圏フィールド科学センター・厚岸臨海実験所助教の伊佐田智規先生にもご参加いただき、オオアマモがホッカイシマエビをはじめ、魚類や甲殻類など多種多様な生物の重要な生活場所となっていることを説明していただきました。
    次に向かった厚岸湖はラムサール条約にも登録されている汽水湖で、国内有数のオオハクチョウの飛来地として知られています。また、湖内ではカキやアサリが養殖場され、地域の経済を支えています。委員達は浅瀬に入り、アマモやコアマモが群生する中に、小魚や貝類など多くの生き物がいる様子を実際に確認しました。
    現地視察後は厚岸湖と別寒辺牛湿原を望む場所にある厚岸水鳥観察館に移動し、厚岸臨海実験所所長の仲岡雅裕先生から、アマモ類の特徴や生態系における役割の重要性についてお話を伺いました。アマモ類の「藻場」は、水中の生き物への生活場所の提供や、オオハクチョウなど水鳥の餌となるなどの直接的な消費や利用をされるだけでなく、海草の表面や藻場の底に微小な藻類が付着することで、それを食べる貝類や動物性プランクトンから最終的に大型の魚類などへ至る、複雑な食物網を形成しているそうです。また、水中の炭素やリン、窒素などを吸収し、酸素を供給するので、水質の向上や安定の面でも養殖漁業に大きく貢献しているとのお話でした。その一方で、このような海草の働きが一般にほとんど知られておらず、世界的にみると年々5%の藻場が失われているという指摘もありました。
    委員からは、水中の光の透過性がアマモ類の生育に大きく関係するので「特に深いところで育つオオアマモは水環境の指標に有用では」という提案や、「藻場の保全のためには、経済的な効果も含めて、漁業者や地域の人へアマモの重要性を伝えていくことが必要」などの意見が出されました。

  • 2014-09-30 国際協力 > No.17 JICA「自然・文化資源の持続可能な利用(エコツーリズム)」研修を実施しました
    2014年8月25日(月)から9月30日(火)まで、アジア、中米、東ヨーロッパの途上国を対象に、エコツーリズムに関する研修を実施しました。国際協力機構(JICA)北海道(帯広)からの委託事業で、地域の自然や文化を住民自身が観光資源として持続的に活用し、地域経済や環境保全意識の向上につなげることを目的としています。今回の研修にはブータン、グルジア、ガイアナ、コソボ、メキシコ、モンゴル、ミャンマー、スリナム、アルバニア、トルコの計10か国から、観光振興や自然公園管理に携わる行政官のほか、NGO職員など10名が参加しました。
    コースリーダーの新庄久志氏(KIWC技術委員長)の引率で、研修員達は然別湖(大雪国立公園)や釧路湿原、厚岸湖・別寒辺牛湿原などの自然公園・鳥獣保護区を訪れ、環境や野生生物に配慮したツアーの運営や、ビジターセンターの活用などの方法について学ぶ一方、牧畜や漁業などの地域産業を観光に活かした事例にも触れました(乗馬、漁船や漁師番屋を利用した体験ツアー等)。
    また、東京や京都で伝統芸術や史跡、里山など、日本の歴史や文化に親しむツアープログラムの体験や、エコツーリズムの理論・施策に関する講義を受け、さらに沖縄で、エコツーリズムによる若者の雇用創出の取り組みについても学びました。
    地理的にも文化的にも多種多様な背景を持つ研修員達でしたが、皆仲が良く、忙しい日程の合間に日本の街を探検しながら、自国の観光振興に役立ちそうなヒントを集め、仲間同士で共有していました。

  • 2014-09-19 国際協力 > No.16 韓国自然保護団体GREF・ERFの合同訪問団を迎えました
    9月17日から21日まで、韓国の自然保護団体・慶尚南道ラムサール環境財団(Gyeongsangnamdo Ramsar Environmental Foundation、以下GREF)、環境生態系研究財団(Environmental Ecosystem Research Foundation、以下ERF)のメンバーら10名が釧路地域を訪れました。GREFの最高責任者(CEO)のKO Jae-Yun氏率いる訪問団には、韓国・慶尚南道のウポ(牛浦)湿地などの自然情報施設の関係者も参加し、秋晴れの中、釧路地域のラムサール湿地で自然系施設や遊歩道を視察しました。
    KIWCは日程中の9月18日に、一行に同行して釧路湿原を訪れ、遊歩道や塘路湖エコミュージアムセンターなどの自然系施設を案内しました。温根内の木道でのタンチョウの発見や、釧路湿原野生生物保護センターの協力によるオオワシなど傷病猛禽類の治療・リハビリテーション施設の見学などに、韓国の湿地保全のプロフェッショナル達も興味津々の様子でした。
    9月19日には、釧路市役所で訪問団とKIWC合同のワークショップを開催し、互いの地域の湿地保全の現状を紹介し、意見を交わしました(参加者17名)。日韓の団体を代表して、GREFのKO氏とKIWCの菊地事務局長から発表された双方の活動や課題から、多くの共通点が見出されたとから、今後GREFとKIWCが連携を進めることは、両組織のみならず、釧路と慶尚南道双方の地域全体の湿地保全に大きく貢献できるとの認識を深めました。
    そこで、ワークショップ終了後に、GREFとKIWCとの今後の連携について案をまとめ、双方代表の署名による覚書を交わし、相互交流を進めていくことを約束しました。
    訪問団はその後厚岸湖・別寒辺牛湿原や霧多布湿原を巡り、21日に帰国の途につきました。

  • 2014-09-06 一般向けの活動 > No.15 釧路川の環境調査「みんなで調べる復元河川の環境・2014秋」を行いました
    2010年に釧路湿原の茅沼地区で蛇行河道への復元が行われた釧路川の環境を調べるため、市民の皆さんと一緒に調査を行いました。27名が参加し、カヌーで釧路川の蛇行復元河道から自然河川に続く「茅沼~スガワラ」間(約5.5km)を下りながら、河岸の植生や河畔の景観、動植物などを観察しました。また、途中で2か所の砂州に上陸し、州の大きさや地層を調べて、蛇行復元後のこの地点での土砂の捕捉状況を確認したりもしました。下船後は、調査でわかったことや気づいたことなどを全員で確認しあって艇ごとにまとめ、釧路川の自然情報地図を作りました。
    この調査は復元河道完成の年から毎年行っており、秋の調査はこれで5回目、夏の調査も含めると通算10回目となります。回を重ねるごとに、リピーターを中心として、参加者がどんどん積極的になり、今では砂州の調査から結果発表に至るすべての作業をひっぱってくれています。おかげで年々スタッフの出番が減ってきました。今回の調査では、砂州に散乱していたゴミを皆で率先して集める場面もあり、参加者の皆さんの湿地保全への意識が高まっているのを感じました。

    なお、この調査は(公財)河川財団による河川整備基金の助成を受けて実施されました。