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「ラムサール条約」登録20周年記念事業
『釧路湿原SLエコツアー』

釧路湿原が1980年6月17日に日本最初のラムサール登録湿地に指定されてから、2000年で20周年を迎えた。2001年1月12日現在で、同条約に加盟している国は123カ国。登録湿地の数は1045までに増えている。
 200締約国、2000登録湿地の実現を目指し、湿地の野生生物保護にだけ注目するのではなく、魚類や水資源など、湿地自然資源の保全と賢明な利用(ワイズユース)、湿地環境の修復や回復による地域環境保全への寄与、さらに、地域レベルでの湿地保全活動や国際協力の普及をめざしたさまざまな活動が世界各地で展開されている。
 今年度、釧路国際ウェットランドセンター(KIWC)は、エコツーリズム、湿地の再生などをテーマに、ラムサール条約登録20周年記念事業を企画、実施した。そのひとつとして、2001年1月13日に『釧路湿原SLエコツアー』を開催した。
 昨年、JR北海道が観光を目的に「SL冬の湿原号」を走らせたところ、蒸気機関車の車窓から冬の釧路湿原を眺めるという試みが観光客及び地元住民に大変好評だったため、今年も「SL冬の湿原号」が実現した。
そこで、KIWCは、公共交通機関であるSLを利用し、冬の湿原をフィールドとした『釧路湿原SLエコツアー』を企画し、3組の親子を含む15名の参加者を迎えプログラムを実施した。
集合場所の釧路駅前から目的地の細岡(ほそおか)展望台まではバスで移動し、帰りの釧路湿原駅から釧路駅までの移動には「SL冬の湿原号」を利用した。
行きのバスの車内では、本プログラムの指導員を務めたKIWC新庄主幹がプログラムの内容や車窓から見える景色について説明を行った。
目的地である細岡展望台に到着し、雪道に印されたウサギの足跡を指導員が子供達に見せたとたん、子どもたちは、動物の足跡を探して雪の中を走り回っていた。屋外では子供達がリーダーシップをとり、指導員から得た動物の足跡に関する情報・知識を大人達に伝えながら細岡展望台までの道のりを進んだ。
細岡ビジターラウンジでは、渡辺館長の指導のもと、「ウッドレター」を作成した。「ウッドレター」とは、北海道をかたどった板に、各自で考えたデザインを彫刻刀で彫り、作品を仕上げるというものである。出来上がった作品に120円の切手を貼ると、実際に郵便物として送ることができる。
当初は、幼稚園児や小学生低学年の子供達が、デザインから彫刻までの作業をできるかどうかができるかが心配されたが、そんな心配をよそに、子供達は、釧路湿原に棲む野生生物や自分のお気に入りの乗り物等を板に描き、大人達の助けを借りながら、彫刻刀を使って、個性あふれる作品を完成させることができた。
細岡展望台から釧路湿原駅までの道を、再び動物の足跡を追いながら進んだ。駅到着後、指導員は、駅のすぐ近くにある湧水地へ参加者を案内し、一年中凍らない湧き水や住宅地ではあまり見ることのできない「霜柱」について説明した。
湧き水を観察した後、指導員は参加者全員に5分間、音を立てず耳を澄ますよう指示した。5分後、静かにしていた間、どのような音が聞こえたかを指導員が参加者に聞いたところ、大人達がカメラのフィルムを巻き戻す音しか聞こえなかったというのに対し、子供達は、「鳥のさえずり」、「風の声」、「木の音」などが聞こえたと答え、大人たちは一様に驚いていた。
帰りは「SL釧路湿原号」で釧路駅まで移動した。参加者は車窓からの景色を楽しみ、おしゃべりをしながらSLの旅を楽しんだようである。
子供達は、雪一面のフィールドで、服のよごれなどを気にせず走り回ったり、自然の中で、野生生物の足跡や湧水など、色々な発見をすることができて楽しかったと感想を述べていた。また、大人の参加者にとっても普段経験できない、深い雪をこいで歩いたり、何年ぶりかに彫刻刀を握り作品を作成するなど、貴重な機会となったようである。
KIWCは、今後も、さまざまなエコツアー/環境教育プログラムを企画し、地域住民を対象とした湿地環境保全の普及啓発に取り組んでいきたい。


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