湿地(ウェットランド)

湿地(ウェットランド)

 「湿地(ウェットランド)」は、読んで字のごとく「湿った場所」、つまり水のある場所を指す言葉です。湿地を守るための条約「ラムサール条約」では、湿原や湖沼、干潟などの他に、ダムや水田のような人工の場所、地下水のたまった鍾乳洞、サンゴ礁など6m以下の海域に至るまで、実に42種類もの湿地のタイプがあげられています。

  • 海洋沿岸湿地: 藻場、サンゴ礁、河口、砂浜、干潟、磯、汽水湖など
  • 内陸湿地: 河川、湖沼、湿原、オアシス、鍾乳洞、温泉など
  • 人工湿地: 水田、ダム、ため池、運河、塩田、沈殿池、採掘現場の水溜りなど

 生き物にとって不可欠な水のある場所・湿地には、さまざまな動植物が育ち、集まります。湿地は私達の暮らしに水をもたらすだけでなく、湿地に生きる動植物からの恵みも与えてくれます。

  • 食料: 魚介類や肉、米、海藻など
  • 燃料: 薪炭や泥炭など
  • 薬の原料: 薬草や抗生物質の産生菌など
  • 建材・工芸品の材料: 木材やカヤ、サンゴなど
  • 肥料: 上流から運ばれ、川の氾濫によりもたらされる土の栄養分

などが挙げられます。

 また、

  • 環境教育の場
  • 旅行やアウトドアスポーツ、バードウォッチングなどのレクリエーションの場
  • 絵画や写真などの芸術の題材

のような形で、喜びや感動をもたらしてくれます。

 さらに最近では、湿原の洪水調節機能や気候調節作用、干潟やサンゴ礁の海水の浄化作など、スケールが大きすぎて気がつきにくい「湿地の恵み」も明らかになってきました。

 人間は昔から、水辺を中心に暮らしを発展させてきました。長年の湿地とのかかわりは、その土地の風習や生活の知恵、信仰などの文化に大きな影響を与えてきました。これも湿地がもたらす恵みのひとつといえるでしょう。

 ラムサール条約の目的は、このような湿地の恵みを、いつまでも得ることができるようにすることです。そのためには、湿地を守りつつ、壊さないようにうまく使う(ワイズユース)工夫や取り組みが必要です。